日本百名山 あといくつ登れるかな

 2008年7月5日 梅雨の晴れ間を狙って北岳山荘に一泊し、間ノ岳だけに挑戦した。昨年の北岳から一年ぶりの南アルプスである。
 大樺沢二俣からは雪渓の登りとなりアイゼンが必要となった。雪渓の途中では、人間よりも大きな岩が登山道を音もなく転げ落ちてきて、登っているパーティの前を横切っていった。幸いにも誰にも怪我はなかったようだが、それを目の当たりにして怖くなった。暫く様子を伺ったが、意を決して登り始めた。雪上は歩きにくく、落石が怖いので気だけはあせったが体力が無くなかなか進まない。しかたなく危険地帯でも休みながら、なんとか落石箇所を抜けやっとのことで八本歯のコルの取り付きまで辿り着いた。気がつくと周りには誰もおらず、他の登山者に置いて行かれていた。
 落石に巻き込まれた人がいないかと県警のヘリが飛んできて、私の歩みの遅さに怪我をしているのかと思ったようで、上空で暫くホバリングをしていた。下手に手を振ると遭難と間違えられるので無視したが、心配をかけてしまった。
 八本歯のコルへの登りも辛かった、昨年北岳からの帰り道だが登りと下りは大違い、木の階段が何度も続き手と足を必死に使ってやっとの思いでよじ登った。
 北岳山荘へはトラバース道を通った。途中ハクサンイチゲに混じって固有種のキタダケソウが咲いていて目を楽しませてくれた。
 かなり遅くなり他に登山者は見かけなかった。登山口の看板には山荘へは5時迄に着くようにと書かれていたので焦ったが足が動かない。それでもなんとか5時ギリギリに辿り着いた。


 翌日は小屋に荷物をデポし、カメラと水だけを持ち景色の良い尾根道を通って間ノ岳を往復した。近づくにつれ間ノ岳はどっしりとした立派な山容を見せ、思っていたよりずっと素晴らしい山だった。後日NHKの「日本の名峰」で、この尾根が3000Mを超える日本で最も高いところに続く稜線であることを知った。頂上付近はピークらしいピークはなく広々としていて雪渓が残っていた。
 小屋に戻り、落石に注意しながら来たルートをそのまま下った。下山後、新聞にこの時の落石の記事が載っているのを見つけて驚いた。